高齢の親が便秘になったとき|まず確認したいことと、家族ができること

便秘

高齢の親が便秘気味だと聞いたとき、家族は意外と迷います。

介護が必要な状態ではない。すぐに救急というほどでもなさそう。けれど、そのまま様子を見ていいのか、食事や水分をすすめるだけでいいのか、判断しにくいことがあります。

高齢の方の便秘は、若い頃の便秘とは背景が少し違います。食べる量や動く量の変化、便意の感じにくさ、いきむ力の低下、飲んでいる薬の影響など、いくつかの要因が重なっていることがあるからです。

しかも本人は、困り具合をはっきり言わないことがあります。「年齢のせい」と思って我慢していたり、家族に心配をかけたくなくて軽く話したりすることもあります。

この記事では、高齢の親が便秘になったときに、まず確認したいこと、受診を考えたいサイン、離れて暮らす家族にもできることを整理します。

高齢の親の便秘が、若い頃の便秘と違うところ

高齢の方の便秘は、食物繊維や水分だけでは説明しきれないことがあります。

腸の動き、食べる量、動く量、便意の感じ方、飲んでいる薬など、いくつかの要因が重なりやすいからです。

腸の動きがゆっくりになる

年齢とともに、腸そのものの動きは穏やかになります。加えて、食べる量や動く量が減ると、腸に入ってくる中身も減り、腸が動くきっかけ自体が少なくなります。一人暮らしの親だと、食事が簡単になって量が落ちていることがあります。

いきむ力が弱くなる

便を押し出すときには、お腹まわりの筋肉で圧をかけています。この力が落ちると、いきんでも便まで伝わりにくくなります。高齢の便秘は、体の変化として自然に起きることです。

便意そのものを感じにくくなる

直腸に便がたまると「出したい」と感じる仕組みがありますが、その感度は年齢とともに下がることがあります。便意がないから出ないのではなく、たまっているのに感じていない、という状態が起こりえます。

のどの渇きを感じにくくなる

意識しないと水分が不足しやすくなります。加えて、トイレが近くなるのを避けて、あえて飲む量を減らしている方もいます。水分が足りないと便は硬くなりやすく、硬い便はさらに出にくくなります。

とくに「出ることは出るけれど硬い」という状態が続いているなら、水分の取り方から見直せることがあります。硬い便そのものについては、こちらで詳しくまとめています。

コロコロ便が続くのはなぜ?硬い便の原因と見直したいこと

下痢のように見えて、便秘が隠れていることもあります

高齢の方が「下痢が続く」「下着が汚れる」と言うとき、背景に便秘があることがあります。

硬い便のかたまりが直腸に長くとどまると、あとから来たやわらかい便がその隙間をすり抜けて出てきます。見た目は下痢ですが、本体はまだ中に残ったままという状態です。

見分けの手がかりは、量が少しずつで何度も汚れること、においが強いこと、お腹が張っていて食欲がないことです。この場合、市販の下痢止めは事態を重くする方向に働きます。

たまった便を取り除く処置は医療の範囲なので、家庭でどうにかしようとせず、受診につないでください。

ここを自己流で進めると、本人につらい思いをさせてしまうことがあります。

お腹の張りが続いているようなら、ガスと便秘が一緒に起きている状態かもしれません。張りのしくみが気になる方は、こちらもあわせてご覧ください。

お腹が張るのに便が出ないのはなぜ?

離れていても確認しやすいこと

高齢の親の便秘は、周りがすぐに気づけるとは限りません。
毎日一緒に暮らしていなければ、食事量やトイレの様子まで細かく見ることは難しいものです。

だからこそ、電話や訪問のときに、少しだけ具体的に聞けることを持っておくと安心です。

たとえば、いきなり「便秘なの?」と聞くより、

  • 「ごはん、いつも通り食べられてる?」
  • 「お腹が張って苦しい感じはない?」
  • 「何日くらい出てない?」
  • 「トイレに行っても、少ししか出ない感じ?」
  • 「最近、薬が増えたり変わったりしてない?」
  • 「下痢みたいに少しずつ出ることはない?」

くらいの聞き方のほうが、本人も答えやすくなります。

特に確認したいのは、便の回数だけではありません。

食欲が落ちていないか、お腹が張っていないか、薬が変わっていないか、下痢のような少量の汚れが続いていないか。このあたりは、受診を考える手がかりになります。

本人が「大丈夫」と言っていても、食べる量が減っている、苦しそうにしている、何日も出ていない、下痢のような汚れが続いている。そういうときは、早めに医療機関へ相談したほうが安心です。

家族の立場でできること

家族の立場でできること

高齢の親の便秘は、家族だけで解決しようとしなくて大丈夫です。

まずできるのは、今の状態を少し具体的に確認すること。そして、薬や体調の変化が関わっていそうなら、医師や薬剤師に相談できる形にしておくことです。

ここでは、家族の立場で確認しやすいことを順に整理します。

お薬手帳の中身を見せてもらう

年齢が上がると飲む薬の数が増えます。その中には、腸の動きをゆるやかにする作用をあわせ持つものがあります。血圧の薬(カルシウム拮抗薬)、利尿薬、鉄剤、胃薬の一部、アレルギーの薬、睡眠薬、精神科で使われる薬、強い痛み止めなどがよく挙げられます。

悪い薬という意味ではまったくありません。必要があって出ているものです。ただ、便秘がこの半年ほどで始まったのなら、その時期に薬が変わっていないかを見てみる価値はあります。

薬が便秘に関係していないか、次の受診で聞いてもらう

お薬手帳を見て、薬が増えた時期や変わった時期と便秘が始まった時期が近い場合は、次の受診で医師や薬剤師に相談してもらうと安心です。

聞き方は、むずかしく考えなくて大丈夫です。

「最近、便秘が続いています。今飲んでいる薬の中に、便秘に関係しそうなものはありますか」

これだけで十分です。

薬が悪いという意味ではありません。必要があって出ている薬でも、体質や年齢によって便秘に関わることがあります。量の調整や飲み方の確認、別の薬への変更など、医師や薬剤師だから判断できることがあります。

ただし、家族の判断で薬をやめたり、量を減らしたりしないでください。血圧や心臓の薬などは、自己判断で止めると便秘より大きな問題につながることがあります。

トイレまわりの条件を見てみる

トイレが寒い、和式でつらい、手すりがなくて落ち着いていきめない。こういった条件は、本人からはなかなか言い出しません。冬場の暖房や、足元に置く小さな台ひとつで変わることがあります。

市販の下剤を送る前に、一度確認する

市販の便秘薬には、便をやわらかくするタイプや、腸を刺激するタイプなどがあります。どれも使い方によって役立つ薬ですが、高齢の方は腎機能や持病、飲んでいる薬との兼ね合いを考える必要があります。

家族の判断で下剤を送る前に、主治医や薬剤師に一度確認してもらうほうが安心です。

市販薬にどんな種類があって、何がどう違うのかを先に知っておきたい方は、こちらで整理しています。

便秘に使われる市販薬の違い|酸化マグネシウムと刺激性下剤を整理

便秘を、生活態度の話にしない

高齢の親の便秘について話すときは、「ちゃんと食べないから」「動かないから」といった言い方にならないようにしたいところです。

たとえ食事量や活動量が関係していたとしても、本人にとっては責められているように感じることがあります。そうなると、便秘のことも、食事のことも、薬のことも話しにくくなります。

高齢の方の便秘は、本人の努力不足ではなく、体の変化や薬、生活環境が重なって起こることがあります。

だからまずは、「何が足りないか」を指摘するより、今どんな状態なのかを一緒に確認するほうが現実的です。食事が減っているのか、水分を控えているのか、薬が変わったのか。責めるためではなく、次に相談するときの材料を集める、という考え方です。

食事や運動だけで変わるとは限りません

野菜を増やす、水を飲む、少し歩く。どれも悪いことではありませんが、高齢の親の便秘では、これだけで改善しないことがよくあります。

食べる量そのものが減っていれば繊維を増やすのは難しく、いきむ力が落ちていれば量を増やしても出しにくいままです。薬が関わっている場合は、なおさら生活の側だけでは届きません。

だからこそ、食事の話を始める前に、薬と体の状態を一度確かめておくほうが早いのです。

こんな様子があるときは、医療機関に相談してください

  • 強いお腹の痛みがある、または吐き気や嘔吐をともなう
  • お腹がかたく張っていて、食欲がない状態が続いている
  • 便に血が混じる
  • 便が急に細くなった状態が続いている
  • 食事量を変えていないのに体重が減ってきた
  • 下痢のような汚れが少量ずつ続いている
  • 数日以上出ておらず、お腹の張り・食欲低下・吐き気がある

嘔吐をともなう強い腹痛は、腸の詰まりの可能性があります。この場合は早めに受診してください。

受診したほうがいい状態の見分け方をもう少し詳しく確認しておきたい方は、こちらにまとめています。

便秘で病院に行く目安|血便・腹痛・便が細いときに考えたいこと

まとめ|まずは薬と体の変化を確認する

高齢の親の便秘について、確認したいことと家族にできることを整理してきました。

年齢を重ねると、腸の動き、いきむ力、便意の感じ方、水分のとり方が少しずつ変わります。そこに、食事量の低下や運動量の減少、飲んでいる薬の影響が重なることもあります。

そのため、高齢の方の便秘は「野菜を増やせばいい」「水を飲めばいい」だけでは整理しきれない場合があります。

家族がまず確認したいのは、いつから便秘が続いているのか、食欲やお腹の張りはあるのか、薬が増えたり変わったりしていないか、という点です。お薬手帳が確認できるなら、次の受診や薬局で相談するときの大切な材料になります。

便秘は本人が軽く話していても、実際にはつらさを我慢していることがあります。責めたり急かしたりするのではなく、今の状態を一緒に整理し、必要なときに医師や薬剤師へつなげる。それが、家族にできる現実的な関わり方です。

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参考にした情報

  • 健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)「高齢者の便秘」
  • 日本老年医学会雑誌「高齢者の慢性便秘症の病態と治療」
  • ディアケア「薬剤起因性老年症候群とその対応|便秘」
  • 川崎高津診療所紀要「高齢者の便失禁を考える」